あゝ無情
私は今、お酒に呑まれている。
おつまみはスルメ。
あと銀杏。
。。。
いつもより早く仕事が終わって。
皆から、もう帰るの?いればいーじゃんという訳のわからない誘いを全力で断り。
そして帰宅。
ポストに挟まった、隠れきれてない四角い封筒を見て、テンションマックス。
(*´∀`*)弦来た!!
玄関で封筒を開けて、中身をソッと見る。
ヾ(o´∀`o)ノ弦だ。。。っ!!!
やべえ超可愛い!!
なんで??
ねぇねぇなんで寝っ転がってんの??
なんで??
なんで靴は脱いでんの??
ねぇねぇなんで??
なんでそんなに可愛いの?!
もう上から下まで本当に可愛いなラカトシュ!!
しばらく眺めて。
満足したあと、弦を一本ずつ変える。
へへっ。
今日はいつもよりも早く帰れたし、弦は届くし、いい日だ。
どんな音がするかな。
いい音かな?
違い分かるかな??
袋可愛いから可愛い音だといいな。
速く弾きたいな!!
あと一本で交換が終わる。
ラカトシュ高校の時の記憶だと芸人さんって覚えてたけど、よく見たらめっちゃバイオリニストだったな。
あの速弾き凄すぎだよね人間じゃないよ。
この弦に替えたらうちも速く弾けるなんて事が起こればいいのに。。。よし!!完成!!
ラカトシュ、装着!!
緊張する。
初、ラカトシュ。初トシュ。
発表会の時よりも、緊張する。
絶対いい音がするから!!
なんならいい匂いもする!!きっとする!!
よし!!
。。。へへっ。ちょっとタンマ。
ちゃんと、ちゃんと弾くんだから!!
姿勢を正して!!
改めて、いざっ!!
。。。
これ、30分前の私の状況よ。
30分前までは私もこれ位浮かれてたのよ。
今?
今は梅酒3本目でおつまみはクラッカーとクリームチーズに変わったわ。
炭酸が飲めないってのはお酒飲むときに色々不便だな。くそが。
あの時の私は幸せだったわ。
ラカトシュに幸せな未来しか見てなかった。
ラカトシュを弓で擦って、ラカトシュから出て来る音に酔いしれて、なんならこのまま朝までラカトシュと共に歩んで行こうと!!
ふふっ。笑ってちょーだい。
この愚かな私を。
思い描いていた理想は所詮、私1人が描いていた妄想に過ぎなかったのだから。
え?どーなったかって?
弾いたわよ。もちろん。
ぺーーーーー。
って。
ぺーーーーー。
って音がしたわ。
(*´∀`*)?!
衝撃よ。
ぺ?
えっ?
ぺって言った??
このバイオリン、今ぺって言ったの??
(*´∀`*)??!
もう若干の混乱も混じってたわ。
(*´∀`*)。。。なんだこいつ、ドミナントの時には普通のくせに、よりによって、ぺ。。。?
音階だって弾いたのよ。
ト長調。
ソーラーシードーレーミーファーソー。
ぺーぺーぺーぺーぺーぺーペーペー!!
(*´∀`*)なん。。。だと。。。?!
決して響かず。
頑として響かず。
一度決めたら揺るがないその決意。
俺は!!
ぺでいく!!
弾けば弾くほど、そんな事を案に言われているような錯覚に陥り。
という結論に達するまでそんなに時間はかからなかった。
相性よかったらどんな音がしたんだろう。
きっといい音がしたんだろうな。
聞きたかった。。。
できる事ならこのバイオリンと相性良ければよかったのに。
これを書いてるこの今も、書きながら何かの間違いであって欲しいと願いを込めて弾いて見るものの、この酔っぱらった耳にも聞こえて来るのは
ぺーーーーー。
という音のみ。
よく分かった。
よく分かったよ。ラカトシュ。
もういい。もーいい。もうたくさんだ。左手は練習しても練習しても音程ちゃんと取れないし速く弾くのもできないし速く弾くどころか遅く弾くのもできねえしなんかもうなんもできねえし!!しかも『ペ』だし!!
ぺってなんだよバカヤローッ!!
もういい。
私に必要なのはバイオリンでも練習でもない。
酒とカラオケだ。